管理人Amberがひっそりと書いた詩(散文)を、
こっそりと公開することを目的として開設された空間。
更新は極めて遅い事が特徴。
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※ Salty Moon 2 の続きになります。
Salty Moon 3
何日か経ったある日の事。
辺りはどんより曇って、いつ雨が降り出しても良いような、そんな素敵な昼下がり。
ナメクジ君のおうちのドアを、コン、コン、と弱々しく叩く音がします。
カタツムリさんがドアの前でナメクジ君を待っていました。
「お散歩、やっぱり行きたくないよね」
外はこんなに気持ちいよ、ゆっくりいっぱいお話しようよ。カタツムリさんは言いたい事がうまく言えません。
また怒られてしまうかも知れないからです。
「ありがとう。かたつむりさん」
ドアの中から穏やかなナメクジ君の声が聞こえます。
カタツムリさんは嬉しくなって、つのがポンポン揺れました。
「あのね、一つお願いがあるんだ」
ドアの中のナメクジ君のは続けて言いました。
「いいよ、 どんなことだい?」
「うん、今夜、また迎えに来て欲しいんだ。そしたら、全部話すから」
「……今夜だね? うん。分かったよナメクジ君」
「ごめんね、ありがとう。カタツムリさん」
カタツムリさんにはナメクジ君がちょっと笑ったような気がしました。
「じゃあ、またね」
そう言って、カタツムリさんが帰って行くのを、ナメクジ君は窓の隙間からじっと見ていました。
カタツムリさんが見えなくなっても、ずっと、ずっと見ていました。
その夜の事。ナメクジ君の家の前まで来て、カタツムリさんはちょっと躊躇いました。
今夜は、月が見えてしまいそうな雲の薄い夜なのです。
「待っていたよ、カタツムリさん。来てくれてありがとう」
カタツムリさんが空の具合を眺めていると、ナメクジ君がドアを開けてくれたのです。
「ああ、ナメクジ君!」
なんと弱々しい笑顔でしょう。
すっかり痩せ衰えて、弱り切ってしまった姿にカタツムリさんは驚きました。
ずっと閉じこもっていたからです。
「これを、一緒に運んでくれない? ぼく一人だと運べないんだ。見つけた時は運べたのにね」
そう言って、ナメクジ君は初めて宝物をカタツムリさんに見せてくれました。
「うわぁ、綺麗だね。これは何? どこに運ぶの?」
カタツムリさんはあっちからこっちから、初めて見る真ん丸な綺麗な石を一生懸命眺めて言います。
「お月さまじゃないかと思うんだ」
ナメクジ君の言葉に、カタツムリさんは首を傾げました。
「お月さま? 月ならもうお空に昇っているよ。今夜はいつ雲が切れてしまうかわからないから、君には危険な夜だよ」
カタツムリさんは真面目な顔で言いました。
「うん。だからさ、これをお月さまが見える所まで運んでほしいんだ」
「えぇ! 危険だよ」
「大丈夫さ。僕は溶けないよ。それに、これが本当にお月さまなのか、そうじゃないのか、確かめに行きたいんだ」
にっこり笑うナメクジ君のに、カタツムリさんはイヤだとは言えません。
もしかしたら、本当に大丈夫なのかもしれないし、そう思って「わかったよ」と頷きました。
──つづく
Salty Moon 3
何日か経ったある日の事。
辺りはどんより曇って、いつ雨が降り出しても良いような、そんな素敵な昼下がり。
ナメクジ君のおうちのドアを、コン、コン、と弱々しく叩く音がします。
カタツムリさんがドアの前でナメクジ君を待っていました。
「お散歩、やっぱり行きたくないよね」
外はこんなに気持ちいよ、ゆっくりいっぱいお話しようよ。カタツムリさんは言いたい事がうまく言えません。
また怒られてしまうかも知れないからです。
「ありがとう。かたつむりさん」
ドアの中から穏やかなナメクジ君の声が聞こえます。
カタツムリさんは嬉しくなって、つのがポンポン揺れました。
「あのね、一つお願いがあるんだ」
ドアの中のナメクジ君のは続けて言いました。
「いいよ、 どんなことだい?」
「うん、今夜、また迎えに来て欲しいんだ。そしたら、全部話すから」
「……今夜だね? うん。分かったよナメクジ君」
「ごめんね、ありがとう。カタツムリさん」
カタツムリさんにはナメクジ君がちょっと笑ったような気がしました。
「じゃあ、またね」
そう言って、カタツムリさんが帰って行くのを、ナメクジ君は窓の隙間からじっと見ていました。
カタツムリさんが見えなくなっても、ずっと、ずっと見ていました。
その夜の事。ナメクジ君の家の前まで来て、カタツムリさんはちょっと躊躇いました。
今夜は、月が見えてしまいそうな雲の薄い夜なのです。
「待っていたよ、カタツムリさん。来てくれてありがとう」
カタツムリさんが空の具合を眺めていると、ナメクジ君がドアを開けてくれたのです。
「ああ、ナメクジ君!」
なんと弱々しい笑顔でしょう。
すっかり痩せ衰えて、弱り切ってしまった姿にカタツムリさんは驚きました。
ずっと閉じこもっていたからです。
「これを、一緒に運んでくれない? ぼく一人だと運べないんだ。見つけた時は運べたのにね」
そう言って、ナメクジ君は初めて宝物をカタツムリさんに見せてくれました。
「うわぁ、綺麗だね。これは何? どこに運ぶの?」
カタツムリさんはあっちからこっちから、初めて見る真ん丸な綺麗な石を一生懸命眺めて言います。
「お月さまじゃないかと思うんだ」
ナメクジ君の言葉に、カタツムリさんは首を傾げました。
「お月さま? 月ならもうお空に昇っているよ。今夜はいつ雲が切れてしまうかわからないから、君には危険な夜だよ」
カタツムリさんは真面目な顔で言いました。
「うん。だからさ、これをお月さまが見える所まで運んでほしいんだ」
「えぇ! 危険だよ」
「大丈夫さ。僕は溶けないよ。それに、これが本当にお月さまなのか、そうじゃないのか、確かめに行きたいんだ」
にっこり笑うナメクジ君のに、カタツムリさんはイヤだとは言えません。
もしかしたら、本当に大丈夫なのかもしれないし、そう思って「わかったよ」と頷きました。
──つづく
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タイトル:遺失物係
管理人 :Amber
Q:管理人やブログを一言で表現するなら?
A:閉鎖的(色んな意味で)。
注意書:
・当ブログは管理人Amberが趣味で書いた創作文を中心としています。
・当ブログの内容は総て無断掲載・無断使用の類いは一切禁止です。
管理人 :Amber
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