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管理人Amberがひっそりと書いた詩(散文)を、 こっそりと公開することを目的として開設された空間。 更新は極めて遅い事が特徴。
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※ Salty Moon 3  の続きになります。


Salty Moon 4 (最終回)

 ナメクジ君とカタツムリさんは、声を掛け合い、力を合わせ、一生懸命丸い綺麗な宝物を運びました。
 大きな葉っぱや、石の蔭、沢山の木が邪魔をして、なかなか月が見える場所までたどり着けません。
 それに、雲がかかっているのでしょう。森の中は真っ暗で、とっても静かです。
 どっこいっしょ。
 どっこいっしょ。
 二人はもう少し、頑張れ頑張れと励ましあいながら、やっと月の見える場所まで来る事が出来ました。
 雲がかかったお空を見上げ、二人は疲れて座りこみました。
 真ん丸宝物を挟んで、二人は座って空を見上げます。
「ああ、もうすぐ雲が切れるよ、本当に平気かい?」
 ナメクジ君を気遣って、カタツムリさんは宝物の冷たい滑らかな肌越しに声をかけました。
 その時です。
 その宝物がぼんやり月の光を受けて輝きだしました。
「うわぁ! 本当だ。本当だよカタツムリさん。お月さまって綺麗だね、大きいね。僕、こんなに奇麗なの初めてだ……」
 大きな宝物の向こう側からナメクジ君の声が聞こえました。
 カタツムリさんは何度も頷いて、ナメクジ君の宝物を見上げました。
「ねぇナメクジ君、君の宝物もなんて綺麗だろう。お月さまの欠片かもしれないねぇ」
 その真ん丸な宝物は今、お月さまの光を受けて、活き活きと輝いて、本当に綺麗です。ナメクジ君はこれが本当にお月さまの一部なんじゃないかと思いました。
「……ナメクジ君……?」
 カタツムリさんは、辺りがあんまり静かな事に気がつきました。ナメクジ君の返事がないのです。
「──ナメクジ君?」
 森の中はシンと静まり、誰も返事をくれません。
 カタツムリさんは大急ぎで大きな宝物の反対側へ走りました。
「ナメクジ君……」
 しかし、もう、どこにもナメクジ君の姿はありませんでした。
 カタツムリさんはの目からポロポロと涙が零れます。
「ナメクジくーん……」
 綺麗な綺麗な宝物。まるで本物のお月さまのように輝いて、だぁれもいない地面を照らしています。
 何度も何度も地上の月を振り返り、カタツムリさんはトボトボ森の奥へと帰って行きました。
 もう、ナメクジ君のいない森に……。



 静かな森の静かな草むら。
 真珠が一粒零れて落ちた。
 綺麗な綺麗なお月さまの滴  
 誰かが拾ってなくなった──。




──終わり
 
 

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※ Salty Moon 2   の続きになります。


Salty Moon 3

 何日か経ったある日の事。
 辺りはどんより曇って、いつ雨が降り出しても良いような、そんな素敵な昼下がり。
 ナメクジ君のおうちのドアを、コン、コン、と弱々しく叩く音がします。
 カタツムリさんがドアの前でナメクジ君を待っていました。
「お散歩、やっぱり行きたくないよね」
 外はこんなに気持ちいよ、ゆっくりいっぱいお話しようよ。カタツムリさんは言いたい事がうまく言えません。
 また怒られてしまうかも知れないからです。
「ありがとう。かたつむりさん」
 ドアの中から穏やかなナメクジ君の声が聞こえます。
 カタツムリさんは嬉しくなって、つのがポンポン揺れました。
「あのね、一つお願いがあるんだ」
 ドアの中のナメクジ君のは続けて言いました。
「いいよ、 どんなことだい?」
「うん、今夜、また迎えに来て欲しいんだ。そしたら、全部話すから」
「……今夜だね? うん。分かったよナメクジ君」
「ごめんね、ありがとう。カタツムリさん」
 カタツムリさんにはナメクジ君がちょっと笑ったような気がしました。
「じゃあ、またね」
 そう言って、カタツムリさんが帰って行くのを、ナメクジ君は窓の隙間からじっと見ていました。
 カタツムリさんが見えなくなっても、ずっと、ずっと見ていました。

 その夜の事。ナメクジ君の家の前まで来て、カタツムリさんはちょっと躊躇いました。
 今夜は、月が見えてしまいそうな雲の薄い夜なのです。
「待っていたよ、カタツムリさん。来てくれてありがとう」
 カタツムリさんが空の具合を眺めていると、ナメクジ君がドアを開けてくれたのです。
「ああ、ナメクジ君!」
 なんと弱々しい笑顔でしょう。
 すっかり痩せ衰えて、弱り切ってしまった姿にカタツムリさんは驚きました。
 ずっと閉じこもっていたからです。
「これを、一緒に運んでくれない? ぼく一人だと運べないんだ。見つけた時は運べたのにね」
 そう言って、ナメクジ君は初めて宝物をカタツムリさんに見せてくれました。
「うわぁ、綺麗だね。これは何? どこに運ぶの?」
 カタツムリさんはあっちからこっちから、初めて見る真ん丸な綺麗な石を一生懸命眺めて言います。
「お月さまじゃないかと思うんだ」
 ナメクジ君の言葉に、カタツムリさんは首を傾げました。
「お月さま? 月ならもうお空に昇っているよ。今夜はいつ雲が切れてしまうかわからないから、君には危険な夜だよ」
 カタツムリさんは真面目な顔で言いました。
「うん。だからさ、これをお月さまが見える所まで運んでほしいんだ」
「えぇ! 危険だよ」
「大丈夫さ。僕は溶けないよ。それに、これが本当にお月さまなのか、そうじゃないのか、確かめに行きたいんだ」
 にっこり笑うナメクジ君のに、カタツムリさんはイヤだとは言えません。
 もしかしたら、本当に大丈夫なのかもしれないし、そう思って「わかったよ」と頷きました。
 
 


 ──つづく

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※ Salty Moon 1   の続きになります。



Salty Moon 2


 ある日のことです。
 お友達のカタツムリさんが、ドアをトントン、トントンと叩いています。
「ナメクジ君、ナメクジ君。素敵な雨上がりですよ。一緒にお散歩に行きませんか?」
 カタツムリさんは、ドアの前で言いました。
 すると、中からナメクジ君が応えます。
「僕は行かないよ。カタツムリさんひとりでお行きよ」
 カタツムリさんはがっかりして、項垂れてしまいました。
「とても気持ちが良いのに……」
 と、寂しそうに呟き、さようなら、と言いました。
 そんなカタツムリさんの様子に、ナメクジ君は心の中でごめんなさいって言いました。
「ねぇ!」
 急に大きな声がカタツムリさんを呼び止めます。
 びっくりしたのは、カタツムリさんです。とぼとぼ歩き始めたのをやめて、またドアに近寄りました。
「どうしたんだい? そんなに大きな声で、何かあったの?」
 行ってしまうカタツムリさんに、慌てて大きな声を出してしまって驚いたのは、ナメクジ君も一緒です。
「う、うん……あ、あのねっ」
 ドアを開ける事は出来ないけれど、宝物の事を、カタツムリさんになら言っても良いかなって思いました。
「カタツムリさん、君はお月さまって、見た事あるかい?」
 ドアに向かって、いいえ、ドアの向こうに居るカタツムリさんに向かって、ナメクジ君は得意げに言いました。
 カタツムリさんはまたまたびっくりしてしまいました。
「何を言っているの? 君はお月さまが見たいのかい? ダメダメ! お月さまなんて見てはダメだよ! 溶けてしまうよっ。 ナメクジ君は月にあたったら死んでしまうんでしょう?」
 カタツムリさんは必死に言いました。
 だって、ナメクジ君は月の光で死んでしまうって知っていましたから。
「そんなの、出鱈目さぁ」
 ますます得意げにナメクジ君は言いました。
「僕はお月さま見たんだよ。とってもピカピカしてて真ん丸で、とってもとっても綺麗なんだ!」
 ナメクジ君は、お空に浮かんだお月さまを見た事がありません。
 お月さまの光にあたると、たちまち溶けて死んでしまうからです。でも、今はそんな事信じてはいませんでした。だって、こんなに素敵なお月さまと毎日一緒に居るんですもの。
「ナメクジ君? お月さまの事なら僕が幾らでも教えてあげる。だから変な事言わないでよ、ねぇ、ナメクジ君……」
 カタツムリさんは心配になりました。
 毎日お家に籠ったきり出てこないナメクジ君は、やっぱり病気なのかもしれない。そう思ってカタツムリさんは昨夜見たお月さまの事を教えてあげる事にしました。
「昨日の夜はね、綺麗なお月さまが昇っていたよ。真ん丸で、黄色いお月さまだった……。お空が明るくて、今日みたいな霧も出てなくて……夜なのに明るいんだ」
 カタツムリさんの話に、ナメクジ君は驚き、叫びました。
「ウソ! 君は嘘吐きだ! お空に月が、お月さまがいるわけない!」
 ドアを見つめていたカタツムリさんは、急に何がどうしたのか分かりません。
「ナメクジ君……?」
「帰ってくれないか! 君とはもう何も話したくない!」
 ナメクジ君は凄い剣幕で怒っています。
 カタツムリさんはなんてひどいウソをつくのだろう。お月さまがお空にあるわけがありません。ずっと一緒にお部屋に居るんですから。
 昨日の夜だって、ちゃんとお部屋にいたんですから……。
「分かったよ。また来るから……」
 カタツムリさんは今度こそ来た道を、とぼとぼとぼとぼ……寂しく帰って行きました。
 
 
 ナメクジ君は、綺麗な真ん丸な宝物を見つめます。
 僕の宝物。僕のお月さま、僕だけの……。
 カタツムリさんは言いました。「黄色い月」って。ナメクジ君は考えます。
 ひとりでずっと、考えました。
 黄色い月だって? じゃぁ、これは何? 白くてツヤツヤしたこれが、お月さまじゃないのなら、一体なんだっていうのだろう。
 考えて考えて、一生懸命考えて、それでも答えは見つかりません。
 



──つづく



  
 

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 寒くて暗い、森の中。ぼんやりと霞む霧の夜。
 小さな窓から、今日もナメクジ君のお部屋を覗きます。
「ナメクジ君、ナメクジ君、居るんでしょう? 出てきておくれよ」
 けれど、応えはありません。
 お家のドアにはいつもカギか掛って、誰が呼んでも叩いても、なんにも応えてくれません。
 でも、森の仲間はちゃんと彼がそこに居るのを知っています。
 みんな心配で、夜になると様子見に来てくれるのです。
 ところが、ナメクジ君はお家の一番おくの奥、誰にも見えない小さなお部屋で、じっと誰かが居なくなるのを待
っているのです。

「外になんて出るもんか」
 ナメクジ君は呟きます。
「外に出たら、僕のお月さま、取られてしまう」
 沢山雨が降った日の事でした。
 その夜は、どんより湿って、とても快適なお散歩日和。
 ナメクジ君は久しぶりに気持ち良く、のんびりと真っ暗で冷たい夜の森を楽しく歩いている時でした。
 きらり、と何かが光ったように見えました。
 木の葉の影に隠れて、見た事もない真ん丸で真っ白い大きな石があるようです。
 最初は恐る恐る、おっかなびっくり近づきました。
 大きな石は真ん丸で、白くてつるんと輝いて、だんだんナメクジ君はこれが何か分かって来ました。
「きっとそうだ、絶対そうだ!」
 ナメクジ君はそれが何なのかわかって、大喜び。
「雨でお月さま、流れてしまったんだ! 初めて見たぞ! 初めて見たぞ!」
 嬉しくなって何度も石の周りをまわります。
 でもすぐに、急に心配になりました。
「お月さまがお空にないと分かったら、誰かが探しに来るかもしれない」
 大変だ、大変だ。
 ナメクジ君は辺りをきょろきょろ見渡して、誰も居ない事にホッとしました。
「僕だけだ。僕だけのだぞっ。お月さまを持ってるなんて、なんて素敵だろう!」
 あんまり綺麗な色なので、自分だけの宝物にしようと決めました。
 そうと決まれば、一生懸命運びます。
「そーれ、そーれ、もうすぐだ、ヤレ、そこだ」
 掛け声だってそーっとそーっと、誰にも聞こえないように、誰にも見つからないように、よっこらよっこら運びます。
 やっとこどっこら運び終わると、慌ててカギをかけました。 
 見られては大変。
 窓にカーテンを引きました。
 取られては大変。
 一番奥のお部屋に入れました。
 それは素敵な宝物。
 疲れて、一緒に眠ります。

 それから何人のお友達が訪ねてきたでしょうか。
 何度雨降りの気持ちの良い夜が過ぎたでしょうか。
 けれどもナメクジ君は誰にも会いません。
 誰とも会おうとはしませんでした。
「僕にはお月さまがいる。お月さまがいるから寂しくない。お月さまもそうでしょう? 僕がいるから寂しくないよね?」
 ナメクジ君は毎日、来る日も来る日もお月さまに語りかけます。
 けれど、お月さまは何も言ってくれません。
 それでも構わない、とナメクジ君は思います。
 だって、こんなに綺麗なんだもの。だって、こんなにうれしいんだもの。
 こんな素敵な宝物を、他に誰が持っているというのでょう。
 それだけでも嬉しくて、何度も何度も笑いかけているのでした。





──つづく

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このブログについて
タイトル:遺失物係
管理人 :Amber
Q:管理人やブログを一言で表現するなら?
A:閉鎖的(色んな意味で)。

注意書:
・当ブログは管理人Amberが趣味で書いた創作文を中心としています。
・当ブログの内容は総て無断掲載・無断使用の類いは一切禁止です。

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