管理人Amberがひっそりと書いた詩(散文)を、
こっそりと公開することを目的として開設された空間。
更新は極めて遅い事が特徴。
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※ Salty Moon 1 の続きになります。
Salty Moon 2
ある日のことです。
お友達のカタツムリさんが、ドアをトントン、トントンと叩いています。
「ナメクジ君、ナメクジ君。素敵な雨上がりですよ。一緒にお散歩に行きませんか?」
カタツムリさんは、ドアの前で言いました。
すると、中からナメクジ君が応えます。
「僕は行かないよ。カタツムリさんひとりでお行きよ」
カタツムリさんはがっかりして、項垂れてしまいました。
「とても気持ちが良いのに……」
と、寂しそうに呟き、さようなら、と言いました。
そんなカタツムリさんの様子に、ナメクジ君は心の中でごめんなさいって言いました。
「ねぇ!」
急に大きな声がカタツムリさんを呼び止めます。
びっくりしたのは、カタツムリさんです。とぼとぼ歩き始めたのをやめて、またドアに近寄りました。
「どうしたんだい? そんなに大きな声で、何かあったの?」
行ってしまうカタツムリさんに、慌てて大きな声を出してしまって驚いたのは、ナメクジ君も一緒です。
「う、うん……あ、あのねっ」
ドアを開ける事は出来ないけれど、宝物の事を、カタツムリさんになら言っても良いかなって思いました。
「カタツムリさん、君はお月さまって、見た事あるかい?」
ドアに向かって、いいえ、ドアの向こうに居るカタツムリさんに向かって、ナメクジ君は得意げに言いました。
カタツムリさんはまたまたびっくりしてしまいました。
「何を言っているの? 君はお月さまが見たいのかい? ダメダメ! お月さまなんて見てはダメだよ! 溶けてしまうよっ。 ナメクジ君は月にあたったら死んでしまうんでしょう?」
カタツムリさんは必死に言いました。
だって、ナメクジ君は月の光で死んでしまうって知っていましたから。
「そんなの、出鱈目さぁ」
ますます得意げにナメクジ君は言いました。
「僕はお月さま見たんだよ。とってもピカピカしてて真ん丸で、とってもとっても綺麗なんだ!」
ナメクジ君は、お空に浮かんだお月さまを見た事がありません。
お月さまの光にあたると、たちまち溶けて死んでしまうからです。でも、今はそんな事信じてはいませんでした。だって、こんなに素敵なお月さまと毎日一緒に居るんですもの。
「ナメクジ君? お月さまの事なら僕が幾らでも教えてあげる。だから変な事言わないでよ、ねぇ、ナメクジ君……」
カタツムリさんは心配になりました。
毎日お家に籠ったきり出てこないナメクジ君は、やっぱり病気なのかもしれない。そう思ってカタツムリさんは昨夜見たお月さまの事を教えてあげる事にしました。
「昨日の夜はね、綺麗なお月さまが昇っていたよ。真ん丸で、黄色いお月さまだった……。お空が明るくて、今日みたいな霧も出てなくて……夜なのに明るいんだ」
カタツムリさんの話に、ナメクジ君は驚き、叫びました。
「ウソ! 君は嘘吐きだ! お空に月が、お月さまがいるわけない!」
ドアを見つめていたカタツムリさんは、急に何がどうしたのか分かりません。
「ナメクジ君……?」
「帰ってくれないか! 君とはもう何も話したくない!」
ナメクジ君は凄い剣幕で怒っています。
カタツムリさんはなんてひどいウソをつくのだろう。お月さまがお空にあるわけがありません。ずっと一緒にお部屋に居るんですから。
昨日の夜だって、ちゃんとお部屋にいたんですから……。
「分かったよ。また来るから……」
カタツムリさんは今度こそ来た道を、とぼとぼとぼとぼ……寂しく帰って行きました。
ナメクジ君は、綺麗な真ん丸な宝物を見つめます。
僕の宝物。僕のお月さま、僕だけの……。
カタツムリさんは言いました。「黄色い月」って。ナメクジ君は考えます。
ひとりでずっと、考えました。
黄色い月だって? じゃぁ、これは何? 白くてツヤツヤしたこれが、お月さまじゃないのなら、一体なんだっていうのだろう。
考えて考えて、一生懸命考えて、それでも答えは見つかりません。
──つづく
Salty Moon 2
ある日のことです。
お友達のカタツムリさんが、ドアをトントン、トントンと叩いています。
「ナメクジ君、ナメクジ君。素敵な雨上がりですよ。一緒にお散歩に行きませんか?」
カタツムリさんは、ドアの前で言いました。
すると、中からナメクジ君が応えます。
「僕は行かないよ。カタツムリさんひとりでお行きよ」
カタツムリさんはがっかりして、項垂れてしまいました。
「とても気持ちが良いのに……」
と、寂しそうに呟き、さようなら、と言いました。
そんなカタツムリさんの様子に、ナメクジ君は心の中でごめんなさいって言いました。
「ねぇ!」
急に大きな声がカタツムリさんを呼び止めます。
びっくりしたのは、カタツムリさんです。とぼとぼ歩き始めたのをやめて、またドアに近寄りました。
「どうしたんだい? そんなに大きな声で、何かあったの?」
行ってしまうカタツムリさんに、慌てて大きな声を出してしまって驚いたのは、ナメクジ君も一緒です。
「う、うん……あ、あのねっ」
ドアを開ける事は出来ないけれど、宝物の事を、カタツムリさんになら言っても良いかなって思いました。
「カタツムリさん、君はお月さまって、見た事あるかい?」
ドアに向かって、いいえ、ドアの向こうに居るカタツムリさんに向かって、ナメクジ君は得意げに言いました。
カタツムリさんはまたまたびっくりしてしまいました。
「何を言っているの? 君はお月さまが見たいのかい? ダメダメ! お月さまなんて見てはダメだよ! 溶けてしまうよっ。 ナメクジ君は月にあたったら死んでしまうんでしょう?」
カタツムリさんは必死に言いました。
だって、ナメクジ君は月の光で死んでしまうって知っていましたから。
「そんなの、出鱈目さぁ」
ますます得意げにナメクジ君は言いました。
「僕はお月さま見たんだよ。とってもピカピカしてて真ん丸で、とってもとっても綺麗なんだ!」
ナメクジ君は、お空に浮かんだお月さまを見た事がありません。
お月さまの光にあたると、たちまち溶けて死んでしまうからです。でも、今はそんな事信じてはいませんでした。だって、こんなに素敵なお月さまと毎日一緒に居るんですもの。
「ナメクジ君? お月さまの事なら僕が幾らでも教えてあげる。だから変な事言わないでよ、ねぇ、ナメクジ君……」
カタツムリさんは心配になりました。
毎日お家に籠ったきり出てこないナメクジ君は、やっぱり病気なのかもしれない。そう思ってカタツムリさんは昨夜見たお月さまの事を教えてあげる事にしました。
「昨日の夜はね、綺麗なお月さまが昇っていたよ。真ん丸で、黄色いお月さまだった……。お空が明るくて、今日みたいな霧も出てなくて……夜なのに明るいんだ」
カタツムリさんの話に、ナメクジ君は驚き、叫びました。
「ウソ! 君は嘘吐きだ! お空に月が、お月さまがいるわけない!」
ドアを見つめていたカタツムリさんは、急に何がどうしたのか分かりません。
「ナメクジ君……?」
「帰ってくれないか! 君とはもう何も話したくない!」
ナメクジ君は凄い剣幕で怒っています。
カタツムリさんはなんてひどいウソをつくのだろう。お月さまがお空にあるわけがありません。ずっと一緒にお部屋に居るんですから。
昨日の夜だって、ちゃんとお部屋にいたんですから……。
「分かったよ。また来るから……」
カタツムリさんは今度こそ来た道を、とぼとぼとぼとぼ……寂しく帰って行きました。
ナメクジ君は、綺麗な真ん丸な宝物を見つめます。
僕の宝物。僕のお月さま、僕だけの……。
カタツムリさんは言いました。「黄色い月」って。ナメクジ君は考えます。
ひとりでずっと、考えました。
黄色い月だって? じゃぁ、これは何? 白くてツヤツヤしたこれが、お月さまじゃないのなら、一体なんだっていうのだろう。
考えて考えて、一生懸命考えて、それでも答えは見つかりません。
──つづく
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このブログについて
タイトル:遺失物係
管理人 :Amber
Q:管理人やブログを一言で表現するなら?
A:閉鎖的(色んな意味で)。
注意書:
・当ブログは管理人Amberが趣味で書いた創作文を中心としています。
・当ブログの内容は総て無断掲載・無断使用の類いは一切禁止です。
管理人 :Amber
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