管理人Amberがひっそりと書いた詩(散文)を、
こっそりと公開することを目的として開設された空間。
更新は極めて遅い事が特徴。
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寒くて暗い、森の中。ぼんやりと霞む霧の夜。
小さな窓から、今日もナメクジ君のお部屋を覗きます。
「ナメクジ君、ナメクジ君、居るんでしょう? 出てきておくれよ」
けれど、応えはありません。
お家のドアにはいつもカギか掛って、誰が呼んでも叩いても、なんにも応えてくれません。
でも、森の仲間はちゃんと彼がそこに居るのを知っています。
みんな心配で、夜になると様子見に来てくれるのです。
ところが、ナメクジ君はお家の一番おくの奥、誰にも見えない小さなお部屋で、じっと誰かが居なくなるのを待
っているのです。
「外になんて出るもんか」
ナメクジ君は呟きます。
「外に出たら、僕のお月さま、取られてしまう」
沢山雨が降った日の事でした。
その夜は、どんより湿って、とても快適なお散歩日和。
ナメクジ君は久しぶりに気持ち良く、のんびりと真っ暗で冷たい夜の森を楽しく歩いている時でした。
きらり、と何かが光ったように見えました。
木の葉の影に隠れて、見た事もない真ん丸で真っ白い大きな石があるようです。
最初は恐る恐る、おっかなびっくり近づきました。
大きな石は真ん丸で、白くてつるんと輝いて、だんだんナメクジ君はこれが何か分かって来ました。
「きっとそうだ、絶対そうだ!」
ナメクジ君はそれが何なのかわかって、大喜び。
「雨でお月さま、流れてしまったんだ! 初めて見たぞ! 初めて見たぞ!」
嬉しくなって何度も石の周りをまわります。
でもすぐに、急に心配になりました。
「お月さまがお空にないと分かったら、誰かが探しに来るかもしれない」
大変だ、大変だ。
ナメクジ君は辺りをきょろきょろ見渡して、誰も居ない事にホッとしました。
「僕だけだ。僕だけのだぞっ。お月さまを持ってるなんて、なんて素敵だろう!」
あんまり綺麗な色なので、自分だけの宝物にしようと決めました。
そうと決まれば、一生懸命運びます。
「そーれ、そーれ、もうすぐだ、ヤレ、そこだ」
掛け声だってそーっとそーっと、誰にも聞こえないように、誰にも見つからないように、よっこらよっこら運びます。
やっとこどっこら運び終わると、慌ててカギをかけました。
見られては大変。
窓にカーテンを引きました。
取られては大変。
一番奥のお部屋に入れました。
それは素敵な宝物。
疲れて、一緒に眠ります。
それから何人のお友達が訪ねてきたでしょうか。
何度雨降りの気持ちの良い夜が過ぎたでしょうか。
けれどもナメクジ君は誰にも会いません。
誰とも会おうとはしませんでした。
「僕にはお月さまがいる。お月さまがいるから寂しくない。お月さまもそうでしょう? 僕がいるから寂しくないよね?」
ナメクジ君は毎日、来る日も来る日もお月さまに語りかけます。
けれど、お月さまは何も言ってくれません。
それでも構わない、とナメクジ君は思います。
だって、こんなに綺麗なんだもの。だって、こんなにうれしいんだもの。
こんな素敵な宝物を、他に誰が持っているというのでょう。
それだけでも嬉しくて、何度も何度も笑いかけているのでした。
──つづく
小さな窓から、今日もナメクジ君のお部屋を覗きます。
「ナメクジ君、ナメクジ君、居るんでしょう? 出てきておくれよ」
けれど、応えはありません。
お家のドアにはいつもカギか掛って、誰が呼んでも叩いても、なんにも応えてくれません。
でも、森の仲間はちゃんと彼がそこに居るのを知っています。
みんな心配で、夜になると様子見に来てくれるのです。
ところが、ナメクジ君はお家の一番おくの奥、誰にも見えない小さなお部屋で、じっと誰かが居なくなるのを待
っているのです。
「外になんて出るもんか」
ナメクジ君は呟きます。
「外に出たら、僕のお月さま、取られてしまう」
沢山雨が降った日の事でした。
その夜は、どんより湿って、とても快適なお散歩日和。
ナメクジ君は久しぶりに気持ち良く、のんびりと真っ暗で冷たい夜の森を楽しく歩いている時でした。
きらり、と何かが光ったように見えました。
木の葉の影に隠れて、見た事もない真ん丸で真っ白い大きな石があるようです。
最初は恐る恐る、おっかなびっくり近づきました。
大きな石は真ん丸で、白くてつるんと輝いて、だんだんナメクジ君はこれが何か分かって来ました。
「きっとそうだ、絶対そうだ!」
ナメクジ君はそれが何なのかわかって、大喜び。
「雨でお月さま、流れてしまったんだ! 初めて見たぞ! 初めて見たぞ!」
嬉しくなって何度も石の周りをまわります。
でもすぐに、急に心配になりました。
「お月さまがお空にないと分かったら、誰かが探しに来るかもしれない」
大変だ、大変だ。
ナメクジ君は辺りをきょろきょろ見渡して、誰も居ない事にホッとしました。
「僕だけだ。僕だけのだぞっ。お月さまを持ってるなんて、なんて素敵だろう!」
あんまり綺麗な色なので、自分だけの宝物にしようと決めました。
そうと決まれば、一生懸命運びます。
「そーれ、そーれ、もうすぐだ、ヤレ、そこだ」
掛け声だってそーっとそーっと、誰にも聞こえないように、誰にも見つからないように、よっこらよっこら運びます。
やっとこどっこら運び終わると、慌ててカギをかけました。
見られては大変。
窓にカーテンを引きました。
取られては大変。
一番奥のお部屋に入れました。
それは素敵な宝物。
疲れて、一緒に眠ります。
それから何人のお友達が訪ねてきたでしょうか。
何度雨降りの気持ちの良い夜が過ぎたでしょうか。
けれどもナメクジ君は誰にも会いません。
誰とも会おうとはしませんでした。
「僕にはお月さまがいる。お月さまがいるから寂しくない。お月さまもそうでしょう? 僕がいるから寂しくないよね?」
ナメクジ君は毎日、来る日も来る日もお月さまに語りかけます。
けれど、お月さまは何も言ってくれません。
それでも構わない、とナメクジ君は思います。
だって、こんなに綺麗なんだもの。だって、こんなにうれしいんだもの。
こんな素敵な宝物を、他に誰が持っているというのでょう。
それだけでも嬉しくて、何度も何度も笑いかけているのでした。
──つづく
一体、これを覚えている人がいるのか?
もうかれこれ十……ん年前の作品のリメイク(ってほとんどしてないケド)。
掃除してたら消えかかった(感熱紙)原稿が出てきて、このままじゃ風化する寸前だと。
このまま風化させた方が良かったんですが、折角読めるうちに出てきたし、ネタもないからこれネタにしようって(自虐? これって自虐ネタ?)思ったんですが、
原稿一枚分で疲れたので続きものにしました(笑)。
もし、O 嬢(足の具合はもう大丈夫?)がこれを見たら、なつかしんでくれるでしょうか。
それとも、爆笑してくださるかしら???
出来れば、呆れないでくれる事を望みます(ーー゛)
では、また「Salty Moon 2」でお会いしましよう。
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このブログについて
タイトル:遺失物係
管理人 :Amber
Q:管理人やブログを一言で表現するなら?
A:閉鎖的(色んな意味で)。
注意書:
・当ブログは管理人Amberが趣味で書いた創作文を中心としています。
・当ブログの内容は総て無断掲載・無断使用の類いは一切禁止です。
管理人 :Amber
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